日本の高配当株10選を分析 - 配当利回りだけを見てはいけない理由
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日本の高配当株10選を分析 - 配当利回りだけを見てはいけない理由

日本の代表的な高配当株10銘柄(総合商社・メガバンク・通信・たばこ・製薬・保険・海運)を、予想・実績の配当利回り、PER、PBR、ROEで比較します。利回りが最も高い銘柄が最も良いわけではない理由をデータで整理します。

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配当を狙って日本株を見るとき、まず目が行く数字は配当利回りです。では、利回りが最も高い銘柄をそのまま買えばよいのでしょうか。結論から言えば、そうではありません。配当利回りが高いのには理由があり、その理由が「株価が下がったから」や「無理に配当を出しているから」であれば、むしろ危険です。

本記事では、セクターを分散して選んだ日本の代表的な高配当株10銘柄を、予想配当利回りと実績配当利回りを並べ、さらにPER、PBR、ROEまで合わせて比較します。同じ「高配当株」でも、性格がどれだけ違うかが一目で分かります。

予想配当利回りは今期の予想配当金ベース、実績配当利回りは前期の実際の配当金ベースです。2つを比べると流れが見えます。予想が実績より高ければ増配の傾向、低ければ減配のサインかもしれません。

数値は2026年6月3日の終値ベース(楽天証券、Refinitiv)で、相場によって日々変わるため、実際の判断の前には各証券会社や公式IRで最新値をご確認ください。

10銘柄ひと目で(予想配当利回りの高い順)

銘柄コードセクター終値(円)時価総額予想配当実績配当予想PERPBRROE
武田薬品4502製薬4,7407.56兆4.31%4.21%38.260.982.60%
JT2914たばこ6,11212.22兆4.13%3.83%17.812.6613.00%
日本郵船9101海運5,3622.17兆3.77%4.29%10.650.717.10%
NTT9432通信147.013.38兆3.63%3.59%11.471.2410.40%
東京海上HD8766損害保険7,09013.73兆3.48%3.07%13.912.4618.70%
KDDI9433通信2,706.510.85兆3.12%2.96%13.412.0314.00%
三井住友FG8316メガバンク6,14823.53兆2.98%2.55%13.041.4910.40%
三菱UFJ FG8306メガバンク3,13737.23兆2.85%2.74%13.911.5911.30%
三菱商事8058総合商社4,97918.47兆2.43%2.21%18.241.938.50%
伊藤忠商事8001総合商社1,858.514.73兆2.42%2.26%13.711.9714.60%

注目ポイント2つ

1. 利回りの順位と「質」の順位がずれる

予想配当利回りの高い順に並べると、面白いことが起きます。利回り1位の武田薬品(4.31%)が、ROEで見ると2.60%と10銘柄で最下位です。逆に、利回りは中位(3.48%)の東京海上HDがROE 18.70%と、質は最も高いのです。

つまり**「利回りが高い」と「会社が良い」はまったく別の話**です。配当利回りだけを見て上から買っていくと、むしろ配当を維持するのが苦しい会社や、利益がピークを過ぎた会社を先に買ってしまうことになりかねません。

2. 予想と実績の差が増配・減配を映す

ほとんどの銘柄は、予想配当利回りが実績より高くなっています。配当を増やしているという意味です。ところが日本郵船だけが例外で、予想(3.77%)が実績(4.29%)より低いのです。これは今後配当が減る可能性、つまり減配のサインと読めます。海運が市況のピークを過ぎて利益が落ちることを、市場がすでに織り込んでいるわけです。

このように、配当利回りはROE(収益性)、PER(バリュエーション)、そして予想と実績の差まで合わせて見る必要があります。指標それぞれの読み方は、株式の投資指標の読み方の記事で整理しました。

グループ別に見る

① 質が支える配当 - 東京海上、JT、KDDI

配当利回りが中位〜上位で、さらに**ROEが二桁で、予想配当が実績より高い(増配傾向)**ため、持続性が比較的しっかりしているグループです。

  • 東京海上HD(8766):ROE 18.70%と10銘柄で最も高いです。予想配当3.48%が実績(3.07%)より高く増配傾向で、予想PER 13.91とバリュエーションも過大ではありません。質と配当のバランスが最も良い銘柄です。
  • JT(2914):予想配当4.13%とこの表で2位、ROE 13.00%も底堅いです。ただし予想PER 17.81、PBR 2.66とやや割高なため、たばこ産業の長期的な需要鈍化をどう見るかが鍵です。
  • KDDI(9433):長年の連続増配で知られる代表的なディフェンシブ配当株です。ROE 14.00%、予想配当3.12%とバランスが良いです。

② 低PBRの金利株 - メガバンク

  • 三井住友FG(8316)、三菱UFJ FG(8306):金利正常化の代表的な恩恵銘柄です。予想配当は2.85〜2.98%と派手ではありませんが、実績より高く増配傾向で、PBRが1.5前後と低く、ROEも10〜11%台に改善しています。自社株買いなど株主還元を積極的に増やしてきた点が、配当以外の魅力です。株価がすでに大きく上がっているだけに、追加の還元余力と金利の方向が次の変数です。

③ 安定インカムと利回りが圧縮された商社 - NTT、総合商社

  • NTT(9432):通信インフラを基盤とした安定配当株です。予想配当3.63%とこの表で中位〜上位、予想PER 11.47と通信株としては負担が小さいです。株式分割で1株の単価が下がり、少額でも買いやすい点も個人投資家には利点です。
  • 三菱商事(8058)、伊藤忠商事(8001):総合商社は累進配当などで知られますが、表では予想配当が2.4%台と最も低いです。配当を減らしたからではなく、株価が大きく上がって利回りが圧縮されたケースです。特に伊藤忠はROE 14.60%と質が良いのに利回りが下がった例で、良い会社ではあるものの、高配当を狙った新規参入の魅力は以前ほどではなくなっています。

④ 表面的な利回りは高いが注意が必要な銘柄 - 武田、日本郵船

予想利回りは上位ですが、その利回りを額面どおりには信じにくいケースです。

  • 武田薬品(4502):予想配当4.31%と最も高いですが、ROEが2.60%と10銘柄で最も低く、予想PERは38.26と最も高いです。利益に対して配当が重いという意味で、配当性向が高い可能性があります。つまり「利益が配当を十分に支えているか」を別途確認すべき銘柄です。
  • 日本郵船(9101):実績配当利回りは4.29%と最も高く、PBR 0.71、予想PER 10.65と割安に見えます。しかし海運は市況によって利益が大きく振れるシクリカルで、今の低いPERが「利益のピーク」のサインかもしれません。 なにより予想配当(3.77%)が実績(4.29%)より低く、市場はすでに減配を見込んでいます。高配当だからと安心できる銘柄ではありません。

高配当株を選ぶときに見るもの

この表から得られる教訓を整理すると、次のとおりです。

  • 予想配当利回り+実績配当利回り:予想が実績より低ければ(日本郵船のように)減配のサインかもしれません。
  • 配当利回り+ROE:利回りが高くてもROEが低ければ(武田のように)、無理に配当を出している可能性があります。
  • 配当利回り+サイクルの位置:海運のようなシクリカルは、利益のピークで利回りが最も高く見えます。
  • 配当性向、連続増配の実績:利益に占める配当の割合が過大でないか、着実に増やしてきた実績があるかも合わせて見る必要があります。本記事の表には配当性向が入っていないので、実際の購入前には各社のIRで別途ご確認ください。

ちなみに日本在住の投資家なら、こうして選んだ高配当株を新NISAの成長投資枠に入れれば、配当と売却益が非課税になります。制度は新NISA完全ガイドの記事で整理しました。

おわりに

同じ「高配当株10選」でも、中を見れば質の良いインカム株(東京海上、KDDI)、割安な金利株(メガバンク)、安定インフラ(NTT)、そして利回りは高いが落とし穴のある銘柄(武田、日本郵船)まで、性格がはっきり分かれます。配当利回りはあくまで出発点で、その利回りがどこから来ているのか、予想と実績がどちらの方向かを見てはじめて、「受け取れる配当」と「いずれ削られる配当」が見分けられます。


※ 本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。数値は2026年6月3日の終値ベースの参考値(楽天証券、Refinitiv)であり、正確性・最新性を保証するものではありません。配当は会社の事情により減ったりなくなったりすることがあります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いします。